
ペットを飼う費用は年々増加…それでもペットに支出を惜しまない理由
みなさんのなかにも犬や猫などのペットを飼っている方がいるでしょう。ペットは「家族の一員」で、大切な存在に違いありません。しかし、ペットを飼う費用は年々増加傾向にあります。大切なペットといつまでも幸せに一緒に暮らすためにも、お金の問題はとても大切です。
今回は、データよりペットを飼う費用がどのくらいかかるかをご紹介。また、ペットへの支出が年々増えている背景、それでもペットを飼い続ける理由についても確認していきましょう。
ペットを飼うのにかかる費用はどのくらい?
ペットを飼うのには、さまざまなお金がかかります。ペットといえば犬や猫。1年間にどのくらいお金がかかるかご存知でしょうか。
アニコム損害保険株式会社の調査によると、犬・猫に1年間にかける費用の平均(2024年)は犬が41万4159円、猫が17万8418円となっています。
<犬・猫にかける1年間の費用の平均>

もっともお金がかかっているのは「フード・おやつ」で、犬は8万2747円、猫は6万1283円となっています。次いで多いのが「ケガや病気の治療費」で、犬は8万371円、猫は3万2458円です。犬と猫で2倍以上の差があります。
ケガや病気の治療費と同様、犬の方がはるかに多くかかっている費用には「シャンプー・カット・トリミング料」(犬5万2353円、猫3435円)、「サプリメント」(犬1万5281円、猫4959円)、「ワクチン・健康診断等の予防費」(犬3万5280円、猫1万3977円)、「交通費」(犬2万4384円、猫799円)などがあります。
また、調査対象がアニコム損害保険のペット保険契約者(2024年分:4137件、2023年分:5217件)ということもあるのでしょうが、「ペット保険料」(犬4万6354円、猫2万9791円)も含まれています。猫よりも犬のほうが、何かとお金がかかっていますね。
同調査には、うさぎや小動物などを飼う費用もまとめられています。
<うさぎ・小動物にかける1年間の費用の平均>

1年間にかける費用の平均(2024年)はうさぎが16万8316円で、猫とそれほど変わらない金額になっています。小動物(鳥、リス、ハムスターなど)は9万8418円となっています。
ペットを飼う費用が高騰するわけは?
ペットを飼う費用は年々高騰しています。その要因としては、次のようなものが考えられます。
●物価上昇の影響
日本はこの数年、物価が上昇するインフレが続いています。インフレは、あらゆるものに波及しています。それはべットにかかる費用でも例外ではありません。
上で紹介した表をみて気づいた方も多いとは思いますが、2023年と2024年の金額を見比べると、物価上昇の影響は明らかです。「前年比(%)」の欄は軒並み100%を超えていますので、物価上昇によってペットを飼う費用も値上がりしているということです。
近年、犬の飼育数は減少傾向にあります。一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると、2013年時点の飼育数は犬が871.4万頭、猫が840.9万頭でしたが、翌2014年には犬820万頭、猫842.5万頭と逆転。以後も差が開く一方で、2024年には犬679.6万頭、猫915.5万頭となっています。
<犬と猫の飼育件数推移(2013年〜2024年)>

また、同調査によると、犬・猫が飼えない要因(飼育阻害要因)として「世話をするのにお金がかかるから」をあげる割合が年々増加しています。犬の場合2020年21.9%→2024年29.7%、猫の場合2020年19.0%→2024年25.7%という具合です。20代・30代といった若年層ほどその割合が高くなっています。
●ペットとの住まいにもコストがかかる
上で紹介した全国犬猫飼育実態調査の「犬・猫が飼えない要因」の最大理由(複数回答のなかでもっとも大きな要因)は、「集合住宅(アパート・マンションなど一戸建てでないもの)に住んでいて、禁止されているから」です。この理由を「最大要因」として挙げている割合(2024年)は、犬で24.1%、猫で29.8%もいます。
持ち家でペットを飼う分には問題ないでしょうが、賃貸物件ではペットを飼うこと自体が禁止されているケースが多いですよね。
賃貸物件にも、ペット可の物件があります。ただ、物件にもよりますが、ペット可の物件は近隣の同程度の物件よりも1〜2割程度家賃などが高く設定されていることが多いようです。また、ペットが部屋を傷つけたり汚したりする懸念があることから、敷金や退去時のクリーニング費用が高額になるケースもあります。
ペット可の物件には、ペット向けに作られた物件と、後からペット可になった物件があります。
ペット向けに作られた物件は、ペットと住むことを前提に作られている物件です。ペット共生賃貸物件とも呼ばれます。たとえば共有スペースに足を洗うところがあったり、室内設備がペットと住むために工夫されていたりと、ペットと住みやすい物件になっています。大家さんや同じ物件の他の入居者さんも、ペットに対する理解があるでしょうから、住みやすさにもつながるでしょう。賃貸物件でペットと住みたいならば最適ですが、その分家賃相場も高めです。
後からペット可になった物件は、もともと「ペット不可」だった物件がペット可になった物件ですので、ペット向けに作られた物件ほどは設備が充実していません。それでもペットを飼いたいという人には需要があります。
さらに「ペット相談可」の物件もあります。こちらは、原則としてはペットを飼えないものの、ペットを飼うことを相談することは可能というものです。相談の結果によっては、ペットを飼うこともできるでしょう。ただ、近隣のペットを飼っていない人への配慮は必要そうです。
●ペットの高齢化と医療費の増加
ペットの犬や猫の寿命は近年伸びています。前述の「全国犬猫飼育実態調査」によると、2024年の平均寿命は犬で14.90歳、猫では15.92歳。2010年と比較すると、犬は1.03歳、猫は1.56歳長くなっています。
ペットの寿命が延びるということは、人間と同様に「老後の医療費」がかかるということ。長生きしたペットは慢性疾患を抱えていたり、介護が必要になったりすることもあります。さらに、手術や高度医療などを受けることもあります。アニコム「家庭どうぶつ白書」(2024年)に示されている犬・猫の年齢別の年間医療費の中央値を単純に合計すると、犬が約122万円、猫が約66万円となっています。高齢になるほど医療費も増加する傾向にあります。
●ペットフード・グッズの高額化
ペットフードやペットが遊ぶグッズにも変化が見られます。今よりももっとペットが元気に、健やかになるといわれたら、買い与えたくなるのが親心(飼い主心?)というものです。
ペット保険相談サービスのMOFFMEが実施した「ペットの家族化に関する調査」によると、「ペットはどのような存在ですか?」という質問に対して「人間と同等の家族」と答えた人の割合が67.1%、「人間の方が優先されるが家族」と答えた人の割合が32.5%。合わせて99.6%が「ペットは家族」と答えています。
そんな「家族」であるペットのために行っていることを聞いた質問では、「ペットフードやおやつにこだわる」がもっとも多くなっています。
<ペットのために行なっていること>

ペットフードといえば、それほど高価なイメージがない方もいるかもしれませんが、最近は選べば国産・食品添加物無添加・有機農法・手作りなどのこだわりが。ペットヒューマライゼーション(Pet Humanization/ペットを家族としてみなすこと)の高まりから、高機能・プレミアムの商品が選ばれる傾向にあるようです。
ただ、こうした高機能・プレミアムの商品は、一般的な製品よりも価格が高いことも珍しくありません。その分出費が増えてしまいます。
ペットは幸福感を上げてくれる
ペットを飼うのにかかる費用はそれなりに高額。しかも年々、その費用は増えつつあります。それでもペットを飼いたいという人はたくさんいます。その理由はやはり、ペットが幸福感を上げてくれるからです。
英国のロンドンスクールオブエコノミクスのマイケル・グマイナー助教授とケント大学のアデリーナ・グシュヴァントナー講師による論文「The Value of Pets: The Quantifiable Impact of Pets on Life Satisfaction」では、ペットが人間の生活満足度に与える影響を金銭的な価値に換算して測定することを試みています。
論文によると、犬や猫を飼っている人は、飼っていない人に比べて生活満足度が7段階評価で3~4ポイント高くなるとのことです。7段階評価で3〜4ポイント高くなるのであれば、相当な違いですよね。そして、この効果を金額に換算すると、年間で最大7万ポンド(約1300万円)の価値があると推定しています。
もちろん、わざわざお金の価値に換算するまでもなく、ペットを飼っている人であれば、多かれ少なかれペットから幸福感を得ているはずです。ペットと暮らすことでその愛情が深いものになることは明らかですし、反対にペットに何かがあったときには深い悲しみに包まれることもまた明らかです。
ペットへの支出は、単なる消費ではなく、信頼と幸福への投資なのでしょう。節約しようという気持ちよりもむしろ「できる範囲でできるだけのことをしたい」と考えている人がたくさんいるようです。
もちろん、お金には限りがありますから、際限なくペットにお金をかけるということはできません。ペットを優先するあまりに家計が立ちいかなくなってしまうようでは本末転倒ですよね。
ペットを飼いながら幸せに過ごしたいと考えるのであれば、家計をしっかり管理して、ペットのためにかけられる予算を立てて、そのなかでペットを飼えるのかどうか、よく検討してみることをおすすめします。
執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計180万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。
X(旧Twitter):@takayamakazue